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和菓子 vs 洋菓子

Chocolatie_sJsweets_anne

生きている楽しみの一つはおいしいものを食べることであるといっても……いいですよね。
少なくとも私の場合はそうです。
古来そういう気分に浮かされた人は多いと見えて学生時代読んだサバランの「美味礼賛」などがまず頭に浮かびます。

和菓子の巻

坂本司 「和菓子のアン」最近おいしく読みました。
モラトリアムを自認する杏子(あん)ちゃんがデパ地下の和菓子売場でバイトを始め、一癖も二癖もある美人店長、和菓子職人をめざす表イケメン内乙女の先輩店員、しっかり者でびっくりの同僚店員にもまれながら、和菓子の魅力に開眼して、さまざまなお客さんの人生模様(?)を「お買い上げになる」和菓子との関連から垣間見、奥深い和菓子の薀蓄を身につけつつ、次第に自分に対する自信を取り戻していくという、楽しくもおいしいお話です。

和菓子には日本の折々の時節と分特徴をもったものが作られます。菓子の名一つとっても完全な理解には古文の素養が必要だったり、知識のみではなくそれを自家のものとして体感できる感性が求められます。
この本では、そのあたりを押し付けがましくなくやんわりと紹介するだけにとどめています。啓蒙書的にこれ見よがしに知識のオンパレードだったら読者はしらけてしまうし、肝心のストーリーが分断されてしまいます。そのさじ加減をよく承知していて、もう知っている人には「そうそう、よく知ってるね」とうるさくなくほほえましく感じられ、知らない人には「へえ、そうなんだ、なんだかおもしろい」と素直に感心して関心を持ってもらえる程度に書かれています。

決して美人のほうには入らない、しかもちょっと太目のアンちゃんですが、呑み込みは早いし機転は効くし、他人に対して素直な感情で接するのは読んでいても気持ちがよくなります。周囲の人々のちょっと大げさなキャラも、時々しらけ気味になりますが、その描写も短いし近ごろの軽いタッチの小説にはよくあることなのでそれほど気にせずにストーリーにまた乗ることができます。

和菓子は洋菓子に対して地味だし飛ぶようにも売れないけれど、息の長い商品ともいえます。毎月必ず同じ銘果を買う夫人、一つだけ異なる銘柄を出すことで言外の警告をしようともくろむ女性社員、洋菓子の売り子さんの人知れぬ葛藤、はてはデパ地下の「売れ残り」予備軍を一手に引き受ける伝説的な売り子さん、一件あっち筋の人でなんだかこわいことをアンちゃんにしゃべりまくるおじさん……軽いミステリを中心に据えて、デパ地下という極めて人間臭い閉鎖的な空間の中で、非日常的に詩情を持つ和菓子を巡る人間たち。さまざまに楽しく、ユーモラスで、ほろりとさせられます。

これが、ただおいしいお店の和スイーツを紹介する本だったら手にとっても読まなかったと思います。
上生菓子やお干菓子からみたらし団子、大福餅にいたるまでのさまざまな和菓子をキーにして少しずつ進んでいく時と変化していく人間をソフトに緩やかに、描いています―――それこそ和菓子のはんなりした色合いのように。
声高に和菓子ってこんなにおいしいんだよ、と叫ばなくても読んでいるうちに、ああ和菓子が食べたいと思わせるような本。

こんど出かけたら桜餅を買ってこよう、と心にきめたのでした。
明日は洋菓子の巻w

Comments

小説なんですね〜。最近は表紙だけではわからなかったりします。
でも、「文章だけで食べ物を語る」って、難しそうです。
かえって想像をかき立てる部分もあるとは思いますが。
和菓子って昔は甘いばっかりだと思ってたんですが、年取るごとに好きになるみたいで……これも年期と言うんでしょうかねえ。

これ、Kindleにでてますね……そそられるなあw

>onionさん

意地汚いのか食べ物関連の小説は放っておけなくてすぐに手に取って……そして買ってしまいますw

当たり外れがありますが、この「和菓子のアン」と「ショコラティエの勲章」は当たり!
和菓子も奥深い味わいがありますね。和菓子=京都みたいな刷り込みもありますが、どこの地域にも伝統の味がありますね。
食べ歩きしたいなあ。。。

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