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不可解な変装 Sherlock Holmes その2

前回の続きです。

ホームズに新聞記事の真相を説明されたワトソンだったが、いまひとつ釈然としない。なぜホームズは前もって説明してくれなかったのか。しかしホームズは言う、実験は今大事な局面にさしかかったところだ。微妙なことが影響するから、いかなることがあっても実験の邪魔をしてくれるな、と。
ワトソンは、それでも何かきわめて重大なことが隠されているとい印象をぬぐいきれないでいる。

翌日早く起きたもののワトソンは疲れていた。通りは静かだった。ゆっくり服を着てキッチンに食べ物を探しに行った。地下からはすでにくぐもった銃声が聞こえてくる。いったいホームズはいつ寝ているんだろうと疑問に思う。

お茶を淹れているところにドアの呼び鈴が鳴った。誰なんだ?キッチンからは見えなかった。ロビーへ向かうと横の窓から昨日来たカートライトだとわかる。すぐにドアを開けた。
「カートライト?」
カートライトの声は固くよそよそしい。
「いったいどういうことだ、ワトソン? いったい何の悪ふざけが進行しているんだ?」
何のことか全くわからなかった。しかしカートライトが憤慨していることはわかった。カートライトはすわりもせず腕を後ろに組んでまさにこれから非難の声を浴びせようと身構えているようだ。
「きみは言ったな、わけがあって絶対にこの家から出られないと」
「そうだ、もう3日目だ」
「昨夜はその限りではなかったということだな」
「いやここにいた。信用がなくなったと悩んでベッドで悶々としていた」
「きみの話を真に受けてこのことは公にしないでおこうと思っていたのに、きみに一杯食わされたとわかっていたならば……」
「カートライト、ぼくを信じてくれ。きみをだましてなんかいない。月曜の午後からこの家を一歩も出ていない」
「じゃ何か、きみには双子の兄弟でもいるというのか?」
「まさか!」
「では説明したまえ。昨夜午前零時5分過ぎ、マルベリー駅のレストランの外にいた男は誰だったんだ?」
「他人の空似じゃないのか?」
「似ているなんてものじゃない。きみそのものだ。頼む、本当のことを言ってくれ、ワトソン」
昨夜は暑かった、それまでの疲れも重なって夢遊病のように知らずに外へ出た可能性もないとはいえない、しかしそんなことを言える雰囲気ではなかった。

「いったいどうなっているんだ。昨夜駅のコンコースを歩いていると閉店後のレストランの外の壁のところできみが茶色のフェルト帽の男と話しているのが見えた。近づいてきみと目が合った。ところがきみはまるでぼくのことを知らないやつを見るような目で見た。きっと大事な話をしているんだろうと思ったさ。だが、考えれば考えるほど、それが長年の親友に対する態度かと思えだした」
突然ワトソンの頭にかかっていた霧が晴れて情勢がはっきりした。カートライトをこの場から帰らせないといけないと思った。
「教えてくれてありがとう。ことは極めて重大だ。だが、ニコラス、お願いだ。お引き取り願いたい」
「帰れだって?」
「そうだ、状況は深刻できわめて危険だ」
「厄介払いしようというのか、ワトソン?」
「その通りだ。そうしようとしているんだ。だがこれにはわけがある。どうかぼくを信じてくれ。いずれすべてを独占特約記事としてきみに明らかにしよう」
カートライトは長い溜息をついた。
「よかろう、ジョン。上出来だ。」
別れ際にカートライトはワトソンの肩を友情を込めて軽くたたく。

ドアを閉めたワトソンはドアにもたれかかって考えをまとめようとした。
ホームズからは何があっても再び実験を中断させるてはならないと言い渡されていた。だが、状況は危機的だ。もしトバイアス・オーガンがワトソンに外見も声も似た男を雇ったのだとしたら、おまけにそいつは長年の友人のカートライトまでがだまされほど似ているのだ、ホームズもだまされてしまうかもしれない。その結果、彼らがどれほど有利になることか。

もしホームズに直接話せないならメモを書いて地下室のドアの下から入れて警告しようとワトソンは思う。
大急ぎで部屋に戻ったとき、通りで叫び声が上がるのを聞く。ワトソンは思わず窓辺に駆け寄る。
ベイカー街を100ヤードほど南に下ったところで3人の男がもみ合っていた。2人ががりで1人の男を無理やり馬車に押し込もうとしている。カートライトだった!

ワトソンは階段を駆け下りると通りに走り出た。御者はすでに馬に鞭をくれ馬車は走りだしていた。ワトソンは必死で後を追った、怒りが追跡に力を与えた。優に半マイルほど走ったがついに馬車は速度を増し、ワトソンは喘ぎながらセント・ヴィンセント教会の前で足を止めた。息を切らして舗道にすわりこんだ。ホームズの助けが必要だった。この状況では約束を破ることなど些細なことだった。すぐに彼のところへ行こうと思った。
その時、追跡に頭がいっぱいで家の正面のドアを開けっ放しで出てきたことに気がついた。新たな不安が心をよぎった。この拉致はオーガンのしわざだ、開いたドアを見逃すようなやつではない。それに思い当ったワトソンは今度はできる限り急いで家へ戻った。しかし、ドアはもはや開いていなかった。
恐ろしい考えが浮かんだ。何者かがもう中に入り込んでいる。そして……。すべてのことが一瞬にしてあるべき場所に当てはまった。カートライトの拉致はワトソンを家からおびき出すための罠だった。馬車を追ってワトソンが外へ出た間にワトソンに変装した何者かが侵入する。ホームズは気がつくまい。ついには地下室のドアを開けてしまうだろう。そしてワトソンだと疑わない者に恰好の標的を進呈することになる……。


最後の締めはどうなるのでしょうか。直情的な行動をとってしまったワトソンではありますが、ホームズの危機を悟って命がけで敵を阻止しようと試みることになります。では、次回は第一話最終回となります。

不可解な変装; Sherlock Holmes

逐語訳をすると大口をたたいたけれど、まとまった時間が取れません。
それで、どんなお話なのかだけでも大雑把に書いておきたいと思います。

枕は先日のワトソンの「秘密の箱」についての述懐。あの後から実際の話が始まります。
とある7月の夕暮れ、日中の暑さが冷めやらぬロンドンの街。ワトソンはベイカー街221Bの居間で窓から風でも入らないかと涼を求めている。
新聞にトバイアス・オーガン(たぶん訳本ならトビアスになるかも)が殺人容疑で逮捕されたが証拠不十分で釈放されたという記事が載っていたのがずっと気になっている。実はオーガンとは面識がある。以前に治療をしたものの脅迫まがいの脅しをうけて恐ろしい思いをした。その件についてホームズと話したいのだが、どうやらホームズは何か考え事をしているようで取りつく島がない。
夕食の時に天気のことなど持ち出して声をかけるがそっけない。外出していたと思われたホームズは、実は一日中地下室にこもっていたという。ワトソンがそのわけを尋ねると、もし理由を聞くならその仕事が終わるまではワトソンも家を一歩も出るなと言われる。好奇心に駆られたワトソンはあとのことも考えずホームズの申し出を受ける。二三日くらい缶詰になっていても読まなければならない論文もあるし、などと自分で理由づけをする。

すると逆にホームズのほうからオーガンのことを気にかけていただろうと図星をさされる。新聞のそのページを開きっぱなしにしていたからだ。今回のホームズの仕事はどうやらオーガンの件に関係があるらしい。オーガンの銃が凶器になったことを明らかにする実験を地下室でやっているという。地下室を一時的に射撃室にして銃を撃っているらしい。よって地下室に近づくなと言われる。オーガンは冷酷無比な殺人者であるから、そのような実験をやっていることを知ったら必ず妨害をするだろう、ホームズの関係者であるワトソンやハドソンさんに危害を加えるかもしれない、だから家を出るな、窓のそばにも寄るなということだ。
翌日眼を覚ますともうホームズの姿は地下室へ消えていた。ハドソン夫人もいない。ワトソンは論文や本を読んで久しぶりに学究の徒として楽しむ、しかし昼になり気温が高くなってくると居間の居心地が悪くなってきた、しかも昼食をどうするかあてがない。そこで地下室へ行ってみる。すると鍵のかかったドアの向こうから銃声と弾丸が金属に当たって立てる凄まじい音がした。これが実験だった。離れていろというホームズの言葉に従ってありあわせの昼食を済ませて、暑さをこらえながらまた読書に戻ったが、集中できない。そのうちに寝入ってしまった。目が覚めるともう夕刻で外では街のざわめきが聞こえる、自由に行き来できる人々に羨望を覚えながらすきっ腹を抱えてワトソンはベッドに入った。

翌日もまたじりじりと気温が上がった。我慢できなくなったワトソンはほんの少しだけと窓のサッシを挙げる。おりしも下に馬車が止まり、大学時代の友人で現在新聞記者をしているカートライトが下りるのが見えた。予告なしの訪問だ。しまったと思う、ホームズからは窓の側にも寄るな、だれか来てもドアを開けるなと固く言い渡されている。
居留守をつかってやり過ごそうかとも思うが、カートライトが「ワトソン!」と呼ぶ声に緊急の切羽詰った様子に思わず階下に行きドアを開ける。カートライトはワトソンのことを心配して駆けつけたのだ。というのも、その日のガゼット紙にホームズとワトソンが仕事での同僚関係と、同時に友人関係も解消したという記事が載っていたからだ。ワトソンにとっては寝耳に水だった。
事情を知りたがるカートライトに、二人は喧嘩別れしたわけではない、これは今やっているホームズの仕事に関係したことだ、すべてが終わったら独占記事を書かせてやるとオフレコで告げて引き取らせる。
ホームズに詰問するために地下室に行く。声をかけるが今はダメだと返事だけ聞こえる。新聞だ!と大声でいうとわずかにドアを開けて「新聞だって? どうやって新聞を読んだ?」と懐疑的である。カートライトのことを話すと、ホームズはしぶしぶ自分が記事にしたことを白状した。オーガンが万一ワトソンに危害を加えることを恐れ、予防措置としてワトソンとはもう関係がないと宣伝したのだという。説明に一応納得はしたもののワトソンは一言先に自分に言ってくれなかったことを不満に思い、しかもこの件で自分の社会的な評判が落ちたであろうことを思い心穏やかではない。

ざっとこれで半分くらいでしょうか。
では続きはまた明日にでも。

SHERLOCK HOLMES ; オーディオブック

Shrediscoveredmysteries

Sherock Holmes "The rediscovered railway mysteries and other stories"
ジョン・テイラーがコナン・ドイルの正典になぞらえて書いたパスティーシュ、新作のホームズ・ノベルです。
BBCが出したオーディオ・ブックでベネディクト・カンバーバッチが朗読、多数の登場人物を語り分けています。
とても面白い、ホームズものとして見るとやや推理の醍醐味に欠けるという評もありますが、聞き流すにはこれくらいがちょうどいい?
聞き流すというのは、まさにその通りでスクリプトがないので聞くしかないのです。繰り返して聞くうちに大体のところはわかってくるのですが、きちんと文章に起こそうとすると意外に細かいところが聞き取れない。。。
仕方がないとあきらめるか、これを機にブリティッシュ耳をしっかり作るか、(もちろん希望的観測なれど)。
ともかく少しずつ書き起こしていくことにしました。聞き取れないところは適当に抜かして前後の平仄を合わせることにしてお茶を濁しておきます。

第一話 謎の変装

現在の住まいの二階にわたしの書き物机がある。引き出しには鍵のかかったシダー杉材の小箱が入っている。小さいころに祖父からもらったもので、いわばわたしの「秘密の箱」とでもいうべきものだ。少年の頃は子供っぽい宝物、例えばパチンコだとか蜜蝋の塊、カニの殻などをいれていたものだが、このところは何年も忘備録入れになっている。雑然とした物入れになっているのを認めるにやぶさかではないが、そこにはわが生涯の友にしてコンサルタント探偵であるシャーロック・ホームズのまだ公にされていないたくさんの事件に関する覚書がある。それらはいろいろな理由があって、わたしがちゃんとした事件の顛末を書き起こしていないのだが、近ごろ多少の時間ができたので再び箱を開けてみた。黄ばんだノートに記された冒険の中には、事件当時からかなりの時間が経っているので、そろそろ公にしてもよかろうと思われるものもあって、時代順に書き起こすことにした。それはいくつかの理由から書き記すのをやめたものである。事件に興味を引くような要素が少なかったわけではない、むしろその逆なのだが、そのほとんどはわたしが個人的につらい思いをしたことによるものである。

とまあ、こんな感じで始まります。ここまでで1分30秒くらい。先はまだ長いです。