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黄金期



それは突然にやって来た。それはある種の啓示。
最近サティにどっぷり浸かっている。グノシエンヌ1番を弾いているとき、それは突然にやって来た──これどこかで……。
正確には知ってる、ではなくてこの感じを覚えている、だった。

記憶の隅にしまい込まれて二度と明るいところへ浮かび上がらないものがたくさんある。たまに何かに触発されて覚醒すると奥底から密やかな波を送り出すものもある。
波が徐々に伝わって意識の表面に達して波紋を広げるとき、わたしはじっと待つ。それが何かつかもうとして慌てて手を振り回すと、あっけなく消えてしまう。だからじっと待つ。
すると波紋は途切れることなくじわじわと強さを増しながら深部から湧き出してくる。そして──矯めた力でひときわ大きく湧き上がったときにわたしは確実に思い出す。
記憶がリボンのようにするする伸びてほどけていく。なぜかくも長く忘れていたのか──強烈な印象が覚えた時と寸分変わらぬ生彩を放って時の流れを一気に飛び越えて現前する。
グノシエンヌ1番を弾きながら浮かんだイメージ──荒野、フリーク集団、火吹き男、道化、天使、ナイフ投げ。
それを大事に膨らませる。あれはCM、何の? たぶんアルコール系だったかそれとも光学系だったか?

ともすれば逃げていきそうなイメージを言葉に置き換え検索を重ねてやっとたどり着いたのが80年代のサントリーのウィスキーのCMだった。 サントリーHPにも制作データしか残っていないが幸いにも動画サイトで見つけることができた。
音楽はマーク・ゴールデンバーグの「剣と女王」、グノシエンヌ1番に通じるところがある。
改めて見て鳥肌の立つようなCMだと思った。現在では作ることができない職人芸。当時は見るたびに「背徳」という秘めた暗い情熱を感じたものだった。アナログ表現の爛熟期。世紀末というにはまだ時間はたっぷりあり、未来への希望が持てた時代、過去を覚えている時代。

80年代にはこの「ランボオ篇」以外にもすばらしいシリーズがあった。
シュールな「ガウディ編」、マグリット風に始まり中国、日本と墨絵で東洋を前面に出した「大地の歌」。



どちらも確かに見た覚えがある。
ガウディは画面に現れる建築も人物も「異質」、われわれの想像の及ばない異次元世界を垣間見たし、逆にマーラーの「大地の歌」では西洋の生んだ東洋の倒錯した美しさに微笑み、想念の東洋を実感の東洋と読み替えるわれわれの感性の豊かさを嬉しく思った。
そろそろ溜め込む一方だったイメージや記憶の断片を呼び起こし、つなぎ合わせ、甦らせて、本当に覚えておくべきものを選りすぐり、最初に接した時の感動を再び紡ぎ出す時期になってきたのかもしれない。

いつ、どこで、何がきっかけで突然降臨してくるかわからない過去からの呼び声を聞き漏らさないためにも心の耳を研ぎすまし20代の感性と30代の緻密さと40代の想像力を持って懐かしくも新たな感動を味わいたいものである。

Comments

こんばんは

最初に紹介されているCMは覚えがあります。音楽が斬新だったからでしょうか。
大好きなCMでした。

2つ目のCMはどれも覚えていないんです。不思議ですね。

>本当に覚えておくべきものを選りすぐり、最初に接した時の感動を再び紡ぎ出す時期になってきたのかもしれない。

ずしっときました。私も忘れてしまってる大事なことを思い出さないと・・・

忘れてしまいたいことは案外しっかり覚えているのに、嬉しかったことなどはどんどん忘れてしまうのは何故なんでしょうか(笑

>Organaさん

覚えていらっしゃったんですね! さすが!
実をいうとわたしもマーラーはこの動画を見てやっと思い出したんです。
他にもヘミングウェイのがあったようにうっすら記憶しています。
昔はクオリティの高いCM作っていたんですね。
単なる知識の記憶だったら調べれば覚え直しができますが、イメージとか、こんな感じというような漠然とした記憶は失われてしまうと二度と恢復できない気がします。
そういう物の方が自分にとっては大切なものであるように思います。
惚けないようにせいぜい色々な事を思い出してあわよくば感動を新たにしたいと思っています!

ああ、懐かしいですねえ。
ガウディもマーラーもこのCMで初めて知りました。とくにガウディ版の映像はショッキングでした。
そして最初のあの曲!確かにサティの曲を聴いた時、「あの感じ」がありました!
NHKの「名曲探偵アマデウス」でサティがとりあげられた時、なーんか懐かしいような気分になったのを思い出しました。
若い頃の感覚を思い出して、それが具体的にカタチになるってスゴイなあ。

懐かしいCMですね〜
風神雷神のは今も鮮明に覚えてます。
今のCMがかなり簡単に出来過ぎている感があると思っていますです。
まぁ、宇宙人ジョーンズだけは笑ってますけど…

>onionさん

優れたCMって30年を経てもたくさんの方が覚えているんですね。現代のCMで30年後にどれくらい人の記憶に残るのがあるのかと思うと状況はお寒いかぎりです。
ガウディもマーラーも20世紀の後半に流行りましたね。
なんだか懐古的になってしまった。。。


>丞相閣下

風神雷神篇もよかったですね。マグリットかと思ったら中国で、次ぎに日本、繋がりに不自然さがなくって。
宇宙人ジョーンズも息の長いCMですね。
最近ではどこまで進化するか楽しみです。

すっかりコメントが遅くなってすみませんです。
記事はアップされた日に読んでいたのですが、ついコメントしそびれてしまって…。
このCM私もよく覚えてます。
ガウディとか…すごく印象的でした。
あの頭の大きいバレリーナの等身がとっても不思議で…
他のCMも素敵だな~と思いながら観ていたのを思い出します。
で、この話をマクタロウにしたら、マーク・ゴールデンバーグのCD持っていたんですって!!
母に貸したままになっているので、今は聞けないんですが、この手の音楽
(「エクソシスト」の音楽のマイク・オールドフィールドなど)ファンの
マクタロウとしては当時かなりツボだったそうです。

>マクノスケさん

こんばんは!
このCMを見つけてからマーク・ゴールデンバーグのCDを買おうか……と購入ボタンに手が伸びかけたのですが、レビューに「CMのサントラ版じゃない」とか「アレンジが違ってがっかり」などと書かれていたので決心が鈍ってしまいました。買いか否か……
そのあたりまたマクタロウさんにお伺いしておいて下さいませ。

了解しました~。
確認してまたコメントしますね。
それまで少しお待ち下され~。

昨日、CDを聴きました。
確かにアレンジとしては、シンセが目立っていて
CMの感じと違っていましたが、
アルバムとしては、なかなか良いように思いました。
ついでに久々に久石さんの昔のアルバムも聴いてしまいました。
こういったアルバムを聴くきっかけを与えて下さったHelvaさんに感謝致します。

>マクノスケさん

恐縮です。そういっていただけて嬉しいです。
確かに入手した当時はよく聞いていたけれど、その後さっぱり……というCDやDVDがかなりあります。
何かの拍子にふと聞きたくなったりするのにどこにしまったかわからない、なんて悲しいこともありました。
こういった隠れた名盤を掘り起こしてまたご一緒に楽しみたいですね!

ご無沙汰しております!ひさしぶりにおじゃまさせていただきました!しゅんけんままこと増澤です。

このCM、めちゃくちゃ懐かしいです!私は中学生だったのですが、荒野の道芸人達・・・BGM、ナレーションの中にでてくる、ランボオという名の詩人・・・14歳の私にとって、なんとも忘れられない光景でした。

こちらのブログで拝見して、もう懐かしいやら、嬉しいやら、まさに昔どこかへしまって忘れてしまっていた・・・そんな探し物を見つけた時の感覚!!ありがとうございました。

今年に入ってから私もブログをはじめました!子育て中心の話題ですが・・・よろしかったら遊びに来てください。

時事英語のwidgetいいですよね!毎日覚えられたらいいと思い、検索サイトで探し貼り付けてみました。こちらにも同じものを見つけて嬉しかったです♪

ご迷惑でなかったら、私のお気に入りにリンクさせていただいてもいいでしょうか?

>しゅんけんままさん

コメント頂きながらお返事が遅れて申し訳ありませんでした。
PCの不調続きでネット入り出来ない事態でした。

そうですか、このCMに心引かれた方がまた一人。
上質のインパクトがすごく強かったんですね。

お気に入りの件、こちらこそそういってくださって嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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