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やがて哀しきにゃんぱらり

Y_kobayashi_sepia_2 こんな小説を読みました。

ひとりの女性がいます。
彼女は偏執的に自分の持ち物の耐久性に疑問と不安を抱かないではいられません。
たとえばこの携帯は防水ですと書いてあっても、本当かしら、濡らしても本当に大丈夫なのかしらと思います。その不安が高じて、ちょっと濡らしてみよう……あ、大丈夫だ、と試してみます。
この心理はなんとなく理解できます。大丈夫だと書いてあったのに実際に濡れたら駄目だった、なんて事になると大変だという心理。ただし普通はここまでですよね。

ところが彼女の不安は解消しません。もう少し濡れたら壊れるんじゃないだろうか、水没させたらどうなるの……とエスカレートしていきます。
さて、ここからはフィクション。実際にはその思いが心の隅をよぎっても絶対にしない行為を、彼女はどんどん突き進んで行うのです。
ある意味、この不安心理が理解可能なだけにどんどんエスカレートしていく彼女の行為を(本を読むことで)覗き見していると、こちらまで事の顛末を早く知りたい、行き着くところまで一蓮托生だとと引き込まれていきます。

ついにこの女性はモノで実験するだけでは飽きたらず、生き物で同じような「耐久テスト」を繰り返します。金魚、犬、猫。
実はこの本を紹介することが主たる目的ではありません。興味がお有りの方はどうぞ本を読んで見てください。そのインパクトの強烈さ、凄惨さにノックアウトされること、請け合いです。

これは女性が猫の耐久性を試す下りです。
猫は「背中を下にして落下したとしても、空中でくるりと回転して、足から先に地面に下りることができるのです」──作中から引用

「猫は慣性モーメントを制御すると言えばわかりやすいですか? フィギュアスケートの選手が回転するとき、腕を真横に伸ばした状態から胴体の方に引き寄せるか、あるいは頭上に上げると、回転が速くなりますよね。あれって、慣性モーメントを小さくしてその分角運動量を大きくしているんです」(bid)

まあ、こんなふうにペダンチックに猫が上半身と下半身の慣性モーメントを個々にコントロールして体を二回捻って着地することを説明しています。

ここに登場するのが、猫の回転の擬態音「にゃんぱらり」。他の事はさておいて、にゃんぱらりという表現に眼が吸い付けられました。なんとくすぐられるような、まさに言い得て妙、猫がひらりひらりと身を捩って回転するイメージを喚起する言葉ですよね。
よく音楽の一節が耳について離れない、頭の中でそこのところが鳴りっぱなしという経験がありますが、言葉も同じ、この「にゃんぱらり」が頭にこびりつきました。何をしていてもにゃんぱらり! 軽やかに身をくねらせてひたっと足から着地する猫の姿が目に浮かびます。

にゃんぱらり──完全な擬態語とも擬音語ともいえない折中語。
「にゃん」で猫を表しますが、「にゃー」という重く粘性のある声ではなくあくまでも軽味とかわいらしさがうかがえる「にゃん」、しかも猫がぎょっとしたり、時には痛い思いをして不意に漏らす声でもあります
一方「ぱらり」で猫の肢体の動きを表します。またこれがうまい。「ひらり」では身のこなしの速さはわかってもまだまだ余裕のある様子、または垂直の動きというより水平方向の動き、もしくは一点に静止していて近づくものから身を捩って避けている感じを受けます。
「ひらりひらり」と二回繰り返すとまた視点は変わり、これは静止ではなく水平方向にかなり速い速度で意志的に動いている、言ってみれば大勢の刺客の剣を容易くかいくぐって逃れるイメージか。「ひらひら」となると上方から軽いものがくるくる舞いながら落ちてくるイメージです。

「ぱらり」から喚起されるのは、一つにまとまっていたものが要が切れてバラバラになって落ちる様とでもいいましょうか。生けてあった百合の花弁が離れて床に落ちる様子、檜扇の紐が切れて端から広がる様、元結いが切れて前髪が額に落ちかかる様(髷そのものではいけませんよ、あれは「ばらり」だから)
しかも「はらり」では脆さ、しどけなさ、無力さが正面に出てしまって弱さを強調する反面、「ぱらり」には分解、解体さえも笑って受け入れられる諧謔味が感じられます。
よって「ぱらり」は、それほど重量感の無い物が下へ素早く動き、僅かな時間差で軽く着地する、ないしは動きを止める、まったく悲劇的色合いのないイメージの言葉です。

複合語「にやんぱらり」は、猫が高いところから二度身を捻って最後に四肢を下に着地する、その時に猫は幾ばくかの衝撃と痛みを受け、もちろん大きな緊張を強いられる。その一瞬の動きと静止を的確に表したのが「にゃんぱらり」なのです。
しかも、「にゃん」に含まれる驚愕と痛み、「ぱらり」に含まれる崩壊の兆し、二つが相まって逆さに落ちた猫が身を捩って下向きに着地するのが決して楽な仕業ではない、むしろ一つ間違えば大事にいたる危うさ脆さをそれとなく匂わせています。
「にゃんぱらり」は哀しい、壮絶にして哀感のある言葉だったんですね。

まじめに読んでくださった方ありがとうございます。この記事はニュートラルであるはずの言葉にどの程度こじつけで感傷的意味合いを見いだす事ができるかの実験でした。
実は書きだして中断、かなり時間が経ってから書き継いだので当初書こうと思っていた内容を全部思い出すことができませんでした。思いついたときが書き時だと痛感しました。

最後に書いておきましょう。小説に出てきた猫の「タマ」が「にゃんぱら……」と動きをとぎらせて上を向いたまま落ちていく姿が実際に見たように忘れられません。。。

付記;「にゃんぱらり!」が、漫画「いなかっぺ大将」に登場するにゃんこ先生がキャット三回転の大わざを出すときのかけ声だと知ったのは小説を読んだ後のことでしたが、これはまた小説とは別の話として分けて考えた方がいいようです

Comments

いやあ、言葉遊びに翻弄されてしまいましたよ!
途中までえ、Helvaさん「いなかっぺ大将」知らないんだ……教えてあげた方がいいんだろうか……と悩んでしまいましたw
一つの言葉にこだわって連想を続けるって楽しいけど、突き詰めるにはパワーが必要で、最近それがなくなってきている気がしています。
ま、いいか、で済ましてしまうんですよね。
もっともっと、遊びに一所懸命になりたいです!Helvaさんみたいに!!

>onionさん
おはずかしながらにゃんこ先生のかけ声ってことに思い至りませんでした。いなかっぺ大将はリアルで知ってたんですけど(笑
でも本当ににゃんぱらり!はすごい言葉だと思ったんですよ。
だからなんとかして記事にしたいと思って。
だれでも何かにこだわりがあると思うのですが、それがドラマであったりスポーツであったり、食べ物であったり、それは人によって千差万別、様々ですよね。
特定の言葉にこだわるのもそのたぐいなんでしょうね。
onionさんのこだわりNowはなんですか?

こんばんは!!
昨晩、マクタロウとふたりで「大ちゃん」の話になって川崎のぼるは
絵が上手かったなんて言っていたもんですから驚いちゃって。
私も「それってにゃんこ先生じゃあ?」などと思いながら読んでました。
川崎先生の発想って今思っても凄いなあって思います。
「てんとう虫の歌」も漫画やアニメも一生懸命見てました~。

>Helvaさん
わたしのこだわりはいまや「刹那」となっているかも。今を楽しんで、先のことは考えたくないというか。。。
どこか絞りきれないまま、数年たってますね〜困ったもんです。

ところで、またブログを移ることにしました。というか、FC2に出戻ります。お暇なときにでもリンクの変更をお願いします。何度もスミマセン〜!

>マクノスケさん
川崎のぼるさんといえば巨人の星、というのが一般の連想ですよね。
でもすごく昔に少女漫画も描いておられて、確か「りぼん」だったと思うのですが増刊か付録かに「ジーナとバラ」という短編があってわたしの記憶ではそれが最初です。戦闘で生き残った兵士が親を殺されてこれまた生き残った少女を助け少女の欲しがったバラを取ってやる、しかし敵の軍服を羽織ったために味方に撃たれて死んでしまうという当時の反戦ムードに乗った小品でした。とても印象的で好きだったのにその後かなりたってから別の本でまったく台詞コマ割まで同じ作品を舞台だけ日本の戦国時代に変えたものを見て、なんだかがっかりしたのを覚えています。
今考えれば売れっ子作家になったときに以前の自作の設定を変えて描き直すことだってありだと思えます。
だからといって川崎のぼるがきらいになったというわけではありませんが。

>onionさん
リンク元へ戻しました。
先日覗いたら更新してあったのでふうんと思っていた矢先でした。
ブログも使い勝手がいろいろありますからね。
このミテログは続きを読むの折り畳みができなくて記事が長くなるのが一つ難点です。

すみません、ブログ記事の内容とは関係なくて申し訳ないのですが、記事の折りたたみについて。
手軽に記述できるJavaScriptを公開してくれているところがありましたので、もしご参考になれば。
http://www.cmehappy.jp/websitetips/expander.html

実際に試してみましたが、ほんとに簡単でした。
記事を書く毎にタグを書き込まなければいけないのですが、コピーペーストが手間でなければ便利かと思います。

あ、あくまでご興味があればということですので、特に折りたためなくても…てことならご遠慮なくスルーしてくださいね~

また遊びにきます。

>Oさん
ありがとうございます!
昨夜さっそく試してみたのですが……簡単とおっしゃるけれどわたしには荷が重いというか( p_q)
このミテログはTypePadを使っているのですがとにかく簡単に書けるように管理ページへいってもテンプレがどこにあるのかもわからない始末でw
そもそもJavaScriptがよくわかってないからでしょう、手持ちのエディターでタグを挿入して書き換えて試してみたんですがサイドバーのJavaがきかなくなって表示が消えるし、エディターは勝手に画像リンクを変えてしまうし、それはちゃがちゃがwになってしまって泣く泣く元へ戻しました。
今日もいろいろやってみたのですがどうも思わしくないので、もういいや、新しいエントリで書き直そうと開き直りました。新規で作ったエントリは過去へ差し挟むことはできませんでした。
かなり前のエントリだから放っておいてもいいんですが、気になっていたものです。
せっかくアドバイス下さったのだからまたゆっくり実験してみたいと思います。

す…すみません却って混乱させてしまったようで(ノω=;)。。。

TypePadのマニュアルを見たところでは、この「head-index」というモジュールにスクリプトを差し込めばなんとかなるかな?という感じでした。
http://start.typepad.jp/manual/templates/module-head-index.html

長いエントリーのときは折りたためるといいですよね。
もしよろしければわたしが試した方法お伝えしますので、必要であればおっしゃってくださいね。

あ、もちろんもういいよーというときはふたたびスルーで!(笑)

>Oさん
ありがとうございました!
無料版でテンプレート編集は出来ませんでしたが、投稿欄に教えて頂いたJavaScriptの記述を直接書き込む事で折りたたみが表示されました。
右も左もわからないなりに適切なご指示を頂いてなんとかヤッター!という気持ちです。

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